景観問題

観光スポットとして知られる東京・浅草寺の雷門前で、地元の台東区が建設工事を進めている高さ約40メートルの「浅草文化観光センター」をめぐり、軋轢(あつれき)が生じている。浅草寺側が「建物が高すぎて歴史的な景観が損なわれる」と異議を唱えているのに対し、区側も「観光情報コーナーなど必要な機能を備えさせた結果、この高さになった」と譲らない。全国でも同様の景観トラブルが相次ぎ、訴訟に発展するケースもある。果たして景観に調和しているか否かはどのような基準で決まり、景観の恩恵はどこまで守られるのだろうか。(高久清史)

「雷門が日陰」浅草寺は不快感

 浅草仲見世商店街の前にそびえ立つ浅草寺の総門、雷門(高さ11・7メートル)。門前の歩道を埋める観光客たちが雷門をバックに記念撮影を行う傍らでは、ねじりはちまきの人力車の車夫たちが威勢良く声をかけている。外国人たちの姿も多く、ガイドブックに目を走らせる。

 この雷門の斜め向かいで建設工事が進められているのが、「浅草文化観光センター」だ。同じ場所にあった2階建ての旧センターが老朽化のため取り壊され、来年12月に地下1階、地上8階建ての新センターが誕生する予定だ。

 この新センターがいま、浅草の町で物議を醸している。異議を唱えているのは浅草寺で、同寺の守山雄順(ゆうじゅん)執事長はこう訴える。

 「観光振興につながるセンターの建設そのものに反対しているわけではないのだが内容に問題

台東区によると、新センターは日本家屋の平屋を積み重ねたような外観のデザイン。有識者や地元観光関係者、区議らで構成するセンター整備検討委員会が、約300の応募作品の中から選んだ。

 外国人観光客から要望の多い外貨両替所、書籍が置かれた観光情報コーナー、喫茶店、会議室などが備わり、高さは41・25メートル。最上階の展望テラスからは雷門、浅草仲見世商店街、本堂といった浅草寺一帯の景色を一望することができる。

 夜間には浅草寺がライトアップされており、区関係者は「展望テラスから見える浅草寺の景色は大きな魅力になる」と期待する。

 だがこの高さに浅草寺側が反発する。区によると、建物の高さなどから計算したところ、冬至の日に1時間、雷門は新センターの日陰になるという。

 守山執事長は「雷門が日陰になれば、門でお奉りしている風神、雷神にも申し訳ない。また実際にセンターが建設されたら、圧迫感を感じるのではないか」と不快感をあらわにする。

「楳図さんの赤白外壁」や「ポニョ」も訴訟に

 浅草寺は昨年9月、西側約400メートルの地域で建設が進む高層マンションをめぐり、景観が損なわれるとして、建物の高さなどの規制を緩和できる「総合設計許可」処分を出した都を相手取り、処分の取り消しを求めた訴訟を起こしている。

 守山執事長は「裁判を起こすことで景観問題に一石を投じたつもりだった。それなのに、『歴史、文化のまち』を掲げる区が雷門周辺の景観を損なうような建物を建てることに違和感を覚える」と怒りが収まらない。