食肉の流通

牛と馬の生食用食肉を取り扱っている飲食店など全国の施設のうち、47.6%の施設で厚生労働省が通知していた衛生基準を守っていなかったことが14日、厚労省が各自治体を通じて実施した緊急調査で分かった。衛生基準には違反者への罰則がなく、これまでも実効性が疑問視されていたが、今回の調査で、あらためて多くの施設で生食用食肉が適切に扱われていないことが判明した。

 そのため厚労省は同日、各自治体に対し、施設に対する調査や指導の徹底を求める通知を出した。

 調査は焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件を受けて実施された。厚労省の担当者は「子供や高齢者など抵抗力の弱い人は、肉の生食を控えるよう、あらためてお願いしたい」と話している。

 5月7〜31日にかけ、生食用食肉を取り扱っている飲食店(1万4708施設)、食肉処理業者(674施設)、食肉販売業者(4474施設)の計1万9856施設を対象に実施。加工の際は衛生管理が徹底された施設で肉の表面を削り取る「トリミング」を実施する、などと規定した基準を守っているかどうか調べた。

「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件を受けて厚生労働省が実施した全国調査で14日、生食肉に関わる業種の約半数で、衛生基準が守られていなかったことが判明し、業界のずさんな体質が浮き彫りになった。

 「後々どんな人間が触るか分からず、うかつに『生食用』として出荷できない」。関東地方にある食肉処理施設関係者はそう語る。

 食肉の流通は、生産農家から出された牛が、食肉処理施設で枝肉になり、さらに加工・卸売業者の手を経て部位ごとにされ、飲食店に渡る。複数の手が関われば当然、食中毒の原因菌が混入する機会も増える。

 業界には「責任を負いたくない」という意識が広まった。厚労省によると、全国の食肉処理施設では、少なくとも2008年からの2年間、「生食用」牛肉の出荷はなかったという。

 加工・卸売業者も「出荷する牛肉は加熱用だけ」と口をそろえる。東京都内のある卸売業者は「出荷していないのに、なんでユッケが提供されているのか不思議だった」と、人ごとのように語った。これに対し、都内の焼き肉店経営者は「生食用の肉でないことは分かっていたが、ユッケを求める客の声に応えたかった」と打ち明ける。