厳しい行政運営

ラジオの可能性を広げる機器やサービスも登場している。日本ビクターが発売した「RyomaX RY-MA1」は、コンパクトな本体にBD、HDD、テレビチューナー、AM/FMチューナー、デジタルアンプ、新ネットワークサービス「MELINK」の受信機能などを統合したオールインワンAVシステム。JVC・ケンウッド・ホールディングスの前田悟新事業開発センター長は、「これまでテレビとオーディオを1台で扱える機器はなかった」と、強調する。

 ラジオのネット配信への対応では、MELINKが挙げられる。MELINKは、TBSテレビ、全国FM放送協議会、レコードレーベルなどで結成する新メディア・プラットフォーム協議会が始めた実験配信サービス。複数の「ラジオサイマルチャンネル」や「専門チャンネル」を、静止画や動画付きで視聴可能。音声のビットレートは128kbpsなので、音質は良好だ。

ラジオは“蘇り”の軌道へ

 ラジオは今、大きな転換期にある。radikoをはじめ複数の新サービスに乗り出しているエフエム東京小川聡マーケティング部長は、「リスナーとの接点を増やすのが狙い。それぞれの配信サービスの意図をはっきりさせて積極的に参加している」と話す。また、「ラジオはリスナーと時間を共有するメディア」とも言う。その特性を踏まえながら、ツイッターなども取り入れて新しい時代に対応していくと、番組作りの今後についても語った。

 ラジオがこれほど注目されたことはこのところない。ラジオは“蘇り”の軌道に乗ったかに見える。

10月開始予定のNHK震災日からラジオ第1配信

 ラジオのインターネット同時配信で注目されるのがNHKの動向だ。NHKは3月9日の総務省による認可を受け、ラジオ第1、同第2、FMの配信を今年10月からNHKオンラインのウェブで始める予定だったが、大震災を機に対応を急進展させた。震災当日の3月11日から、「R1 NHKラジオ第1ライブストリーミング」として、ラジオ第1放送の全国配信を暫定的にスタート。パソコンのほか、iPhoneiPadでもウェブで再生可能だ。

、「割り算」した数字と絶対数とは、同じ土俵で扱ってはいけないということだ。2つの変数があるのに、片方だけで説明することはできない。これこそ、典型的な「率」の落とし穴である。だが、これにはまると、とんでもない見当違いを引き起こすことがあるのである。同じように「高齢化率」も、率に惑わされて、誤った認識が広がっている。

 ある専門家は「高齢化率の高い地方はこれから大変で、高齢化率の低い首都圏は今後も元気である」と話していた。一見もっともらしく聞こえるが、ここでも「絶対値の増減」という変数が抜け落ちていた。高齢者の絶対数の増減で見てみれば、実は東京や大阪といった高齢化率の低い都市こそが、これから最も厳しい事態を迎えることがわかる。国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、首都圏1都3県では、2015年には10年前に比べて65歳以上は269万人、75歳以上は154万人も増える。率にして、それぞれ45%増と63%増という事態だ。
 高齢化とは、そもそも高齢者の絶対数の激増のことだ。にもかかわらず、「高齢化=高齢化率の上昇」という抽象化が行われたことで、誤解が生じている。爆発的な介護需要に対して、厳しい行政運営が迫られることになる。

 また高齢化率を論拠に、都市と地方という「地域間格差」を問題視する議論が蔓延している。だが人口が流入する首都圏でも現役世代の減少が加速している。地域間格差といった問題は五十歩百歩であり、むしろ日本人の加齢により、現役世代の減少と高齢者の激増という現象が日本中を襲っている。地域間格差ではなく、日本中の内需不振が、「不景気」の原因なのだ。