火山の振る舞いは

イオンのショッピング・モールがテナントに求める出店条件とはどのようなものなのか。手元にりんくうタウン大阪府泉南市)の「イオン泉南ショッピングセンター出店募集要項」という書類がある。泉南市もまた、イオンの進出で「見るも無残なシャッター商店街になった」(地元商工会幹部)街だ。それもそのはず、百六十七もあるテナントのうち、地元からの出店は一軒のみ。しかも厳密には泉南市ではなく隣接する堺市からの出店だった。前出商工会幹部はこう不満を口にする。
「なにが地域活性化ですか。植樹なんてやってますが、そんな、ちんけな文化事業には私らはもう騙されませんよ」
 募集要項を見て驚くのは、テナント側の負担が異常に大きいことだ。まずは地代だ。地元市会議員が呆れながら話す。
「もともと埋立地で企業が集まらず、イオンは大阪府から坪五百円で借りている。それを物販テナントに坪一万五千円で貸している」
 さらに月に坪当たり一千円の「営業保証費」や、売り上げの一・二%が徴収される「販売促進費」などがある(ただし、金額は物販やサービス、飲食など業態により異なる)。加えて、レジスターはイオン指定機種を使用することが決められており、売上金はイオン指定の金融機関で一括して預かり、共益費(坪当たり八千九百円)などを差し引いた上、各テナントへ翌月か翌々月に振り込まれる。また、駐車場負担金が坪当たり二千五百円、出店者協議会費七千円(一カ月)、ロッカー使用料一扉一千円(同)など、あらゆる名目でテナントから金を巻き上げる仕組みになっている。地元喫茶店主が語る。
「地元の家族だけでやってるような零細な店はとても出店など無理ですわ。最初は地元商店街にもイオンに店が持てるみたいな甘いこと言って、いざ出店となったらとんでもない条件を出してくる」
 そして驚くことに、テナントの負担金はこれだけではない。前掲したものは、あくまで継続的にかかる費用であり、出店の際には「初期費用」が別にかかる。当初、イオンへの出店を検討していた別の飲食業者が話す。
「オープンの販促費だけで五十万円にプラス坪当たり一千円や。これだけでもうあかん」
 この上、共用スペースの内装費が坪五万円、現場管理費が坪一万一千五百円、内装管理費が一区画二十万円と坪当たり三千三百円。さらには、「レジスター工事費」や「消火器設置費用」「電話施設料金」など、テナントの負担は積み重なる。この飲食業者は憤る。
「内装費や駐車場料金は、分からんでもない。でも、なんで消火器に七千五百円もかかって、一般駐車場代の他に従業員駐車場代も取られるんだ。さらに電話一台五万五千円や。営業保証費とか協議会費もわけわからん」
 ここまでみると、イオンは小売り流通業者の仮面を被った、「場所貸し」であることがよくわかる。

アメリカ北西部のワシントン州にそびえるセントヘレンズ山が目覚めたの噴火の2カ月前だった。そして1980年5月18日、マグニチュード5.1の地震によって脆弱になった山の北側斜面が開放弁となり、地下で圧力が高まっていたマグマドームから噴出が始まった。

 爆発によって大気中に噴き出した火山灰、火山岩、火山性ガスは数億トンに及び、爆風と火砕流のためにおよそ10分ほどで山の北部数百平方キロに甚大な被害をもたらした。

 前もって警報が出ていたため住民の多くは避難でき、歴史的にも多数の記録が残された噴火となった。しかし、これまでに発表された地下の地震活動のシミュレーションは、北側にかたよった爆発とその影響を再現する上で十分な精度を持っていなかった。

 セントヘレンズ山の噴火直後から、なぜ被災地がこれほど広範囲かつ北方に広がったのか、科学者は理由の解明に取り組んできた。ある理論では、脆弱化した北斜面から火山物質が超音速で噴出を続けた可能性が示唆されたが、後の研究では手榴弾爆発のように全方向に拡散した噴火だったことが確認された。しかし、拡散した噴火のシナリオとこれまでの2次元シミュレーションを組み合わせてみても、セントヘレンズ周辺の被害状況を的確に再現するには至らなかった。

 今回の研究者らによれば、かつてのモデルは火山物質の降着について、爆発の物理特性と周囲の地形がもたらす影響を独立した要素として捉え、さらに重力の影響を完全に無視していたという。

 新しいモデルでは、これらすべての関係性を織り込んで3次元化した。重力を新たな要素として取り入れた結果、噴き出した火山物質の降下速度が高まって火山灰や火山ガスがより高速に流れることが判明し、重力が焦土化した地域を再現する上で重要な要素であるとわかった。

 得られた結果は、実際の被害に合致する初のセントヘレンズ山噴火のシミュレーションだという。

 しかし今回のシミュレーションは、1980年の大災害を解明することだけでなく、将来の噴火予測に重心を置いている。

 研究を率いたイタリア国立地球物理学火山学研究所(Istituto Nazionale di Geofisica e Vulcanologia)の火山学者トマーソ・オンガーロ(Tomaso Ongaro)氏は、「この成果は、別の火山の噴火シナリオに適用できる。何が起こるのか事細かな予測はできないにせよ、とてつもなく役立つことがわかるだろう」と語った。

 ニューヨーク州立大学バッファロー校の火山学者マーカス・バーシック(Marcus Bursik)氏もこれに同意し、「ありがたいことに、火山の振る舞いは共通する」と述べる。同氏は今回の研究に参加していないが、「このような別の火山にも適用できるモデルがあれば、測定した地震波信号を投入することで、理論的に何が起きるかを確認できる。誰かが(このようなモデルを)作ってくれないか、自分も含め多くの人々が長らく待っていた。今回の研究は大きな成果だ。敬意を表する」と語った。