北海油田

中世から羊の放牧が行なわれ、諸島内には羊が9万頭いるといわれる。フェロー諸島の「フェロー」とは「羊」の意味という説が有力。また、馬や牛、ヤギなどの放牧、養鶏なども盛んである。牧草の栽培は諸島の至る所で行われている。ただし、高緯度、冷涼な気候のため、牧草以外の農耕には適していない。

伝統的な放牧と並行して、古くから水産業も盛んであった。現在は漁業が産業の中心となっている。漁獲された魚介類や水産加工品の多くは、日本の水産会社などが買い付けて、最終的に日本国内へ運ばれる。フェロー諸島産のサケや白身魚の冷凍フライなどが代表的である。また、日本・アイスランドノルウェーとともに、捕鯨国でもある。伝統的な捕鯨の手法が残り、地域住民が共同してクジラ捕りに参加する習慣は今でも残る。フェロー諸島EUに加盟しない大きな理由は、捕鯨政策の違いにあるとされる。

そして、現在のフェロー諸島で注目される産業は、北海油田フェロー諸島領海域の石油開発である。これは地域経済を支える収入源として期待されている。

フェロー諸島は、音楽や伝承の宝庫である。いずれも、古い北欧の文化を残すもので、ノルウェーアイスランドともまた違う。フェロー諸島の人々にとって祭りやクリスマスなど時季折々に欠かせないのが、チェーンダンスである。このチェーンダンスは、バイキング時代には北欧で広く行われたようであるが、なぜかフェロー諸島にしか残っていない。踊りは東ヨーロッパのポルカに似ている。先導役に合わせて島の古謡(クヴェアイ)を大合唱しながら足を踏み鳴らす。これがフェロー諸島の最重要行事であるオラフ祭のときには、国会議事堂前の広場は国中から集まってきた人々によって巨大なチェーンダンスが日暮れ時から3時間近く続けられる。もちろん、指揮を執るのは首相。これは、バイキング時代の集会の名残で、直接民主制に付随するように形式的に現代まで引き継がれている。ほぼ国民総出の熱狂的なチェーンダンスが終わっても、町内単位で朝までチェーンダンスが続けられる。