アメリカで金融危機

年末年始の休みを機に、海外に出かけた方も多いのではないだろうか。だが、日本人の海外旅行客数は2000年の1762万人をピークに頭打ちとなっている(図)。一方、日本を訪れる外国人旅行客はほぼ右肩上がりに伸びている。08、09年は原油価格の高騰や新型インフルエンザ、リーマンショックの影響などにより、足踏みを余儀なくされたものの、10年は尖閣諸島問題による中国からの観光客減の影響を受けながらも過去最高を更新した可能性が高い。

「観光立国」を実現するため、外国人旅行客誘致の旗振り役にと設置された観光庁は、発足から2年と少しが過ぎた。以前からの取り組みも甲斐あってか、00年代に入ってからは外国人旅行客の増加ペースが早まっている。
 ところが世界のなかでみると、日本は先進国のなかでも、外国人旅行者誘致で後れをとっているのが現状だ。09年の日本の外国人訪問者数順位は世界で33位。前年より5つも順位を落とし、チュニジアハンガリークロアチアなどの後塵を拝す結果となっている。

 日本は地理的に欧米人が訪れにくいということもあるが、観光業界の受け入れ態勢にも問題がある。総務省「訪日外国人旅行者の受入れに関する意識調査」(08年)によると、宿泊施設のおよそ4割が外国人を受け入れておらず、そのうち約7割は今後も宿泊してほしくないという。こういった部分は早急な意識改革が必要になるだろう。

リーマン・ショック以来の世界同時不況に関しては、「100年に一度の経済危機」とみなす見方が、支配的である。そう評価されるのは、81年前の1929年に起こった世界大恐慌を想起させるからである。たしかに、現在の世界同時不況と29年の世界大恐慌は、アメリカを発信源としている点で共通している。しかし、今回の同時不況が、2つの点で大恐慌とは異なっていることも、見落としてはならない。

第一は、アメリカで金融危機が発生してから世界経済全体へその影響が広がるまでのスピードが速かった点である。これは、ヨーロッパの金融機関がアメリカ発のサブプライムローン問題に深く関与していたこと、新興国が先進国向け輸出にウエートをおく形で経済成長をとげていたこと、などによるものである。つまり、大恐慌が起こった81年前と比べて、今日では、世界経済の連関が、はるかに緊密化しているのである。

第二は、「巨大化した国際金融資本市場の混乱と世界的規模にわたる銀行システムの機能不全による金融危機が、現在の景気後退に強く影響している点である」(08年12月発表の内閣府政策統括官室[経済財政分析担当]「世界経済の潮流 2008年II」)。これは、大恐慌と異なるだけでなく、70年代に生じた二度の石油危機とも異なる事実である。08年に発生した世界同時不況について、それが長期化するという懸念が強まっているのは、景気の後退と金融システムの混乱とが絡み合っているからである。