JPEG形式で撮影

一般的なデジタル一眼は、レンズを交換する際にゴミやホコリが紛れて入り、撮像素子に付着する心配がある。特に、ミラーレス一眼はレンズを外すとローパスフィルターがむき出しになってしまい、汗や水滴などが付着しやすい。

 GXRは、レンズと撮像素子が密封された「カメラユニット」を交換する方式を採用し、撮像素子にゴミが付着する可能性は低い。ユニットの交換も、液晶モニターやシャッターボタンを備えたボディーにスライドして取り付けるだけなのでとても簡単だ。

 GXRの魅力を左右するカメラユニットだが、GXRが登場した2009年末の時点では2種類しか存在しなかった。35mm判換算で50mm相当の単焦点レンズとAPS-C型の大型CMOSセンサーを搭載した「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」と、24-72mmをカバーする標準タイプの「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC」の2つだ。わずか2種類ではユニット交換式のメリットがほとんど享受できず、早期のラインアップ拡充が期待されていた。

 その期待に応えるかのように、2010年6月には光学10.7倍ズームの「RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC」が、11月5日には28mm相当の単焦点レンズとAPS-C型の大型CMOSセンサーを搭載した「GR LENS A12 28mm F2.5」がラインナップに追加された。

 画質にこだわる写真ファンの興味の中心は、単焦点レンズとAPS-C型の大型CMOSセンサーを搭載する2つのカメラユニットに集中している。特に、幅広いシーンで活躍する28mmの単焦点レンズを搭載するA12 28mm F2.5の登場を心待ちにしていたファンは多い。写真ファンに人気の「GR DIGITAL」シリーズと同じ焦点距離ながら格段に大きな撮像素子を備え、画質や描写にどれぐらいの違いが出るのかが気になっているはずだ。

 単焦点レンズを搭載するカメラユニット2製品がそろったことで、やや低迷気味だったGXRの評価は変わるのだろうか? 実写画像でGXRの実力を改めてチェックしたい。

大型撮像素子を生かしたボケ味がGR DIGITALシリーズにはない魅力

 28mm相当の画角を持つリコーのデジカメといえば、メーカー自身が「切れ味鋭いナイフ」と形容するコンパクトデジカメ「GR DIGITAL III」(2009年8月発売)が思い浮かぶ。実際、ピント合わせのスピードやシャッターを切ってからのレスポンスは、GXRよりもGR DIGITAL IIIの方が上だ。

 GR DIGITAL IIIで撮影した写真と比べると、APS-Cサイズ(23.6×15.7mm)という大きな撮像素子を持つGXR+GR LENS A12 28mm F2.5(以下、28mmカメラユニット)の方が階調に余裕が感じられる。他社のデジタル一眼で撮影したものとも違う、リコー独特の雰囲気を持つ写真に仕上がる。同じ絞り値ならば、28mmカメラユニットの方がより前後のボケが大きくなる。もっとも、GR DIGITAL IIIも開放絞り値がF1.9と明るいレンズを搭載しているため、撮り方によってはボケ味を出した撮影も可能だ。

 28mmカメラユニットの開放絞り値はF2.5で、F1.9のGR DIGITAL IIIは1段ほど明るいレンズを搭載していることになる。だが、背景などを大きくぼかしたい時は、撮像素子の大きい28mmカメラユニットの方が有利といえよう。逆に、奥までピントが合うパンフォーカスを生かしたスナップ撮影には、GR DIGITAL IIIが向いているといえるだろう。

大型撮像素子のメリットは、高感度撮影時にも発揮される

 撮像素子の大きさの違いによる差は、高感度撮影時でも歴然と出た。同じ感度で撮影した画像を比較すると、28mmカメラユニットの方がノイズや階調再現がともにGR DIGITAL IIIの一段上を行く印象だ。

 28mmカメラユニットの写真はノイズこそ多少あるものの、いやな色ノイズが見られない分だけ自然な感じを受ける。撮像素子が1/1.7型と小さいGR DIGITAL IIIでは色の付いたノイズが見られ、近景はともかく、遠景になるとやや厳しい描写だ。1/2.3型CMOSセンサー搭載のRICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VCはノイズ処理の痕跡がかなり目立ち、走っている車のテールランプの一部がノイズ処理で消えてしまった。

 とはいえ、撮像素子の面積が違ううえ、最低ISO感度も異なるので、こういう比べ方自体がフェアではないかもしれない。最低感度のISO64で撮影したGR DIGITAL IIIの写真にもそれなりのシャープさがあり、撮像素子の大きさを考えれば階調も十分に確保されているといえる。

 逆に、最低ISO感度がともに200と高めになっている28mm、50mm単焦点レンズのカメラユニットは、明るいシーンを絞り開放で撮影しようすると、露出の限界を超えてしまうことも多かった。しかも、ライブビューには過度なオーバーやアンダーといった露出の状況は反映されず、撮影するまで分からないのが難点だ。

JPEGとRAWで、画質や絵作りに差が大きい点に注意

 RAW撮影時のファイル形式は、アドビシステムズが提唱するDNG形式だ。この設定では、同時にJPEG形式の画像が保存されることもあり、さまざまなソフトで現像や閲覧が可能になる。

 今回は、アドビシステムズの写真管理ソフト「Lightroom3」を利用して画像を閲覧した。28mmカメラユニットで撮影した場合、DNGは無調整で展開すると彩度が高めになるのに対し、JPEGはやや彩度が低く落ち着いた感じで、シャープネスが強めにかかる印象を受けた。GR DIGITAL IIIの場合は、DNGとJPEGで若干の差異はあるものの、それほどでもない。GXR+28-300mmのDNGはどんよりした色調で、JPEGの方が鮮やかでコントラストが高かった。

 JPEG形式で撮影する場合は、これらのクセを頭に入れておくとよいだろう。もちろん、DNG形式のRAW画像ならば、各種ソフトで現像や調整をすれば、思いどおりの写真に仕上げられる。

多彩な機能を持つユニットだけでなく、ボディー自体の選択肢も増やしてほしい

 ボディーサイズに関していえば、電源を切った時にレンズが本体に収納され、ほぼフラットな形に収まるGR DIGITAL IIIの方が断然小さい。GXRの場合、ボディーがそれなりに大きいうえ、単焦点レンズを搭載したカメラユニットは電源オフ時も同じ大きさのままなので、ポケットに入れて持ち歩くのはちょっと無理だ。ストラップを取り付けて首から下げるのがちょうどよい。