配偶者控除

「控除から手当へ」の原則は一体どこへ行ってしまったのか。

 子ども1人当たり月1万3000円の給付で今年度スタートとした子ども手当。11年度からは満額の2万6000円に引き上げられるはずだったが、財源不足から、7000円上積みし月2万円とすることが厚生労働、財務など関係5閣僚の間で合意された。約束より6000円少ないだけでなく、上積み分の受け取りは3歳未満に限定した。

 これによって必要となる追加財源は年約2400億円に抑えられる。ところが、それでも何を財源に充てるかが、いまだ政府・民主党内で決まっていない。

 負担増を国民に求めるのが嫌だから、「すべての子どもを社会全体で育てる」という理念を曲げ、子ども手当に所得制限を設けるといったことも検討されてきた。

 しかし、理念を曲げるわけにいかないということからだろう。所得税配偶者控除と成年扶養控除の縮小で財源を捻出する案が有力になったという。ただ、最終的にそうなるのかは、不透明な要素も残る。

 民主党は、政権交代前のマニフェスト配偶者控除や扶養控除を廃止すると明記していた。ところが廃止への反発を恐れ、配偶者控除や成年扶養控除は存続させたまま子ども手当の実施に踏み切った。「控除から手当へ」というより「控除も手当も」である。

 今や共働き世帯の数は、働く夫と専業主婦の世帯を大きく超える。特に所得の低い世帯は、共働きなしで家計を支えるのが困難だ。配偶者控除の適用割合を所得別にみると、年収200万〜300万円の所得者で10%に満たないのに対し、年収1000万〜1500万円では6割を超える。夫だけの収入で十分な生活水準を維持できるためと考えてよい。



 配偶者が働かなくてもやっていける世帯が一般的に優遇され、共働きをしなければ暮らしていけない所得層には恩恵が及ばない制度はやはりおかしくないか。

 さらに、男女共同参画社会を目指すというなら、公約通り廃止するのが筋だろう。成年扶養控除についても同じだ。障害などによりどうしても働けない配偶者や扶養家族については、別途、給付という形で支援できるように工夫すればよい。