米長期金利

金融市場の資金の流れに変化が出てきた。国債が売られ、長期金利の指標になる2日の新発10年物国債終値利回りが約5カ月半ぶりに1・2%台まで上昇した。東京株式市場の日経平均株価が5カ月半ぶりの高値をつけ、金などの商品価格も上がった。背景にあるのは、米国の追加金融緩和観測の後退だ。国債価格が下落するとの予測から金融機関などが保有する国債を売却し、資金を株や貴金属など他の資産にシフトする動きが加速している。

 新発10年物国債は売られて価格が下がり、逆に終値利回りは前日比0・035%高い1・2%と13営業日連続で1%を上回った。ただ、米長期金利が日本以上に速いペースで上昇しているため日米金利差が拡大したと受け止められ、東京外国為替市場では円売り・ドル買いが進み、午後5時現在、前日比57銭の円安ドル高の1ドル=84円12〜15銭と円安に動いた。円安は輸出関連企業の業績改善期待につながり、日経平均株価終値は前日比180円47銭高の1万0168円52銭と大きく改善した。

 市場関係者は「債券安・株高に流れやすい市場環境」(証券大手)と説明する。東京工業品取引所金先物など商品価格も上昇し、「国債から他の資産にお金が流れ始めている」。

 こうした流れのきっかけをつくったのは、米国市場の変化だ。米連邦準備制度理事会FRB)は11月3日、6千億ドル(約50兆4千億円)の長期国債を購入する追加金融緩和を打ち出したものの、経済指標の改善などが追い風になって、期待した緩和効果と反対に金利が上昇を始めた。

 現在では、一層の追加緩和の観測は遠のき、10月半ばに2%前半だった米長期金利は3%近くにまで上昇した。これに引きずられて日本の長期金利も上がり、日銀が10月に打ち出した「包括緩和」も、金利を下げるという本来の目的が達成できていない。

 株高は、企業の経営環境を好転させる。だが、みずほ銀行三井住友銀行が今月1日の新規融資分から、固定型住宅ローン金利の引き上げを発表するなど、家計負担には悪影響もある。