出世しないと

職場に復帰してからは、開発の中心的な役割を課せられた。カラー画像を印刷する時、インクが出すぎてプリンターが異常動作しないようにコントロールして印刷するためのプログラムを開発。99年に次女を出産した後も、育児休暇を1年間取得。再び時短勤務を取りながら職場に復帰し、研究を続けた。子育てしながら出願した特許件数は10件にもなり、羽生さんが開発した数々の技術はプリンターに応用、商品化された。

 そして、2000年以降は、新たに売り出すカラープリンターの画質を向上させる開発部門に配属された。「一台の商品が開発される時、企画や設計、開発、販売など、商品化までには70〜80人と多くの人が関わります。私はその末端ですが、完成した新商品のパンフレットを見た時、ものづくりに関わった達成感を得ました」

 職場では一日にこなさなければならない仕事やスケジュールをメモ書きし、以前は5時間かけていた作業を3時間で済ませるように集中した。朝出社したら、一日に「やるべきこと」をメモに書き、「何時までに仕上げる」と目標を立てる。当然、時間内に終わらない作業もある。そういう時は共有のデーターベースに作業日誌を書き込み、「今日はここまで作業を終えて、残ったのはこの仕事」と、自分が一日に何を行ったのか、同じ作業をしている同僚に公開した。

どの年代でも「いいえ」と答えた割合が多かったが、その割合は20代が最も少なく、54.2%。「出世したい」が45.8%で、ほぼ半々に分かれた。ただ、30代になると、出世したくない人が増え(59.7%)、「出世したい」と答えたのは40.3%。さらに40代になると、「出世したい」のは3割を下回った(27.1%)。

出世の最終目標については、「特にない」「なし」と答えた人が最も多かった(15人)が、「経営者」「社長」や「役員」といった経営者側を挙げた人も12人いた。ほかには、「課長」、「部長」や「正社員」など。「今は肩書きがないので、役職がほしい」「会社の歴史の中で女性が就任したことがないポジション」という意見もあった。また、出世したい理由として、「出世しないと会社に見放される」「自分が決断・実行できる範囲が広がる」「経営に携わりたい」「実績を上げて独立したい」等、書き添えてあった。

一方、出世したくない理由の中では、「責任が重くなるから」「責任が増えてストレスになるから」など責任を負いたくないという意見と、「今の仕事で十分」という現状に満足という意見が目立った。ほかには、「出世して仕事が増えると、生活との両立が難しくなるから」「出世するとやりたい仕事ができなくなる」、「派遣社員なので考えたことがない」などが挙がった。