有罪率99・9%

ホテルにとってもう一つ悩ましいのが空調問題だ。節電協力を訴えている東電だけに、28度の温度設定と照明を暗くする計画を明らかにしている。業界関係者は「来場者が多いと28度では蒸し暑いだろう。東電の株主もホテルにとっては潜在客であり、サービスがよくないと思われるのをもっとも恐れているはずだ」とみる。

 同じプリンスホテルグループの会場でもう一つの注目される株主総会が28日のソニー。ホテル側はノーコメントを貫くが、例年どおり、グランドプリンスホテル新高輪で行われる。ソニー株はネット配信ゲームサービスの個人情報流出問題から、17日についに2000円を割り込んだ。ハッカー側も「つかまるまで続ける」と発言するなど、収束のめどがたっておらず、ロングラン総会になるとの予測が大半だ。

 犯罪があったかどうかは、ここでは問わない。問題は、ライブドア事件が「既存秩序に盾つくホリエモンを許しておけるか! 」という国民感情フジサンケイグループを狙ったホリエモンへのマスコミの嫌悪感に乗ったものであり、小沢民主元代表の追い落としに執念を燃やした検察の真意が、「反霞ヶ関」の感情を露わにする「利権政治家」への嫌悪感にあったことである。

 つまり検察は感情で動き、そこに「世間受け」という欲を上乗せ、特捜部らしさをアピールしなければならないというプレッシャーに後押しされた。

 「検討会議」の提言は中途半端で、「特捜部の在り方」を問う内容にはなっていないが、江田法相が「全面可視化」を強く指示したことで、笠間治雄検事総長は都内の不動産ファンドを巡る特別背任事件で、全過程を可視化、6月13日、起訴した。この試行がもたらす影響は、想像以上に大きい。

「カメラを怖れて尋問が手ぬるい。あれでは容疑者の本音は引き出せない」

 DVDを見た検察幹部は、こう感想を漏らしたというが、それが全面可視化というものだろう。いつものように手練手管で自白を引き出し、その後で録音録画する「一部可視化」では何の意味もない。

 1999年から行われている司法制度改革は、司法試験の合格者を増やして司法制度を充実、裁判員裁判制度の導入、検察審査会の起訴議決制などを通じ、「お上」のものだった裁判を、国民も参加することで意識を高め、同時に国民に、十分な司法サービスを提供することを目的としていた。

 その改革の趣旨に沿えば、「有罪率99・9%」という刑事裁判の予定調和の世界は、壊れなければならない。

 検察が起訴すれば99・9%が有罪になるということは、裁判官も弁護士もそれを報じる司法マスコミも、法廷の場で白黒をつけるという「公判の役割」を放棄しているに等しい。逮捕起訴で事件は終結している。

 しかし、検事は神ではない。

 勘違いはするし、見立ても間違う。なのに、逮捕したら起訴しなければならず、起訴したら有罪にしなければならないという圧力のなかで、無理な供述調書を作成、自白に追い込み、神話を守ろうとする。