業務

第四章 業務


(通常業務)
第三十三条  日本銀行は、第一条の目的を達成するため、次に掲げる業務を行うことができる。
一  商業手形その他の手形の割引
二  手形、国債その他の有価証券又は電子記録債権を担保とする貸付け
三  商業手形その他の手形(日本銀行の振出しに係るものを含む。)、国債その他の債券又は電子記録債権の売買
四  金銭を担保とする国債その他の債券の貸借
五  預り金
六  内国為替取引
七  有価証券その他の財産権に係る証券又は証書の保護預り
八  地金銀の売買その他前各号の業務に付随する業務
2  前項第五号の「預り金」とは、預金契約に基づいて行う預金の受入れをいう。

(国に対する貸付け等)
第三十四条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、前条第一項に規定する業務のほか、国との間で次に掲げる業務を行うことができる。
一  財政法 (昭和二十二年法律第三十四号)第五条 ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において担保を徴求することなく行う貸付け
二  財政法 その他の国の会計に関する法律の規定により国がすることが認められる一時借入金について担保を徴求することなく行う貸付け
三  財政法第五条 ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において行う国債の応募又は引受け
四  財務省証券その他の融通証券の応募又は引受け
五  貴金属その他の物品の保護預り

(国庫金の取扱い)
第三十五条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、法令で定めるところにより、国庫金を取り扱わなければならない。
2  日本銀行は、前項の規定により国庫金を取り扱う場合には、第三十三条第一項に規定する業務のほか、その取扱いに必要な業務を行うことができる。

(国の事務の取扱い)
第三十六条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、法令で定めるところにより、通貨及び金融に関する国の事務を取り扱うものとする。
2  日本銀行は、前項の規定により国の事務を取り扱う場合には、第三十三条第一項に規定する業務のほか、その取扱いに必要な業務を行うことができる。
3  第一項の国の事務の取扱いに要する経費は、法令で定めるところにより、日本銀行の負担とすることができる。

(金融機関等に対する一時貸付け)
第三十七条  日本銀行は、金融機関(銀行その他の預金等(預金保険法 (昭和四十六年法律第三十四号)第二条第二項 に規定する預金等及び貯金をいう。)の受入れ及び為替取引を業として行う者をいう。以下同じ。)その他の金融業を営む者であって政令で定めるもの(以下「金融機関等」という。)において電子情報処理組織の故障その他の偶発的な事由により予見し難い支払資金の一時的な不足が生じた場合であって、その不足する支払資金が直ちに確保されなければ当該金融機関等の業務の遂行に著しい支障が生じるおそれがある場合において、金融機関の間における資金決済の円滑の確保を図るために必要があると認めるときは、第三十三条第一項の規定にかかわらず、当該金融機関等に対し、政令で定める期間を限度として、担保を徴求することなくその不足する支払資金に相当する金額の資金の貸付けを行うことができる。
2  日本銀行は、前項の規定による貸付けを行ったときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣及び財務大臣に届け出なければならない。

(信用秩序の維持に資するための業務)
第三十八条  内閣総理大臣及び財務大臣は、銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第五十七条の五 の規定その他の法令の規定による協議に基づき信用秩序の維持に重大な支障が生じるおそれがあると認めるとき、その他の信用秩序の維持のため特に必要があると認めるときは、日本銀行に対し、当該協議に係る金融機関への資金の貸付けその他の信用秩序の維持のために必要と認められる業務を行うことを要請することができる。
2  日本銀行は、前項の規定による内閣総理大臣及び財務大臣の要請があったときは、第三十三条第一項に規定する業務のほか、当該要請に応じて特別の条件による資金の貸付けその他の信用秩序の維持のために必要と認められる業務を行うことができる。

(資金決済の円滑に資するための業務)
第三十九条  日本銀行は、第三十三条から前条までに規定する業務のほか、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、第三十三条第一項第五号から第七号までに掲げる業務又は第三十五条第二項若しくは第三十六条第二項に規定する業務と一体的に行うことによって金融機関の間における資金決済の円滑に資すると認められる業務を行うことができる。
2  第七条第四項の規定は、前項の認可について準用する。

外国為替の売買)
第四十条  日本銀行は、必要に応じ自ら、又は第三十六条第一項の規定により国の事務の取扱いをする者として、外国為替の売買を行うほか、我が国の中央銀行としての外国中央銀行等(外国の中央銀行又はこれに準ずる者をいう。以下同じ。)又は国際機関(我が国が加盟している国際機関をいい、国際決済銀行を含む。以下同じ。)との協力を図るため、これらの者による外国為替の売買の事務の取扱いをする者として、外国為替の売買を行うことができる。
2  日本銀行は、その行う外国為替の売買であって本邦通貨の外国為替相場の安定を目的とするものについては、第三十六条第一項の規定により国の事務の取扱いをする者として行うものとする。
3  日本銀行は、第一項の規定により我が国の中央銀行としての外国中央銀行等又は国際機関との協力を図るため、自ら、又はこれらの者の事務の取扱いをする者として行う外国為替の売買のうち、国際金融面での協力に該当するものとして財務大臣が定めるもののため行う外国為替の売買については、財務大臣からの要請に基づき、又はあらかじめその承認を得て、行うものとする。

(国際金融業務)
第四十一条  日本銀行は、我が国の中央銀行としての外国中央銀行等又は国際機関との協力を図るため、これらの者との間で、次に掲げる業務を行うことができる。
一  本邦通貨をもって表示される預金に係る預り金(第三十三条第二項に規定する預り金をいう。)
二  前号の業務により受け入れた預金を対価として行う国債の売却及びその買取り
三  有価証券、貴金属その他の物品の保護預り
四  当該外国中央銀行等又は国際機関が行う国債の売買の媒介、取次ぎ又は代理
五  その他当該外国中央銀行等又は国際機関による本邦通貨又は本邦通貨をもって表示される資産の適切な運用に資すると認められる業務として財務省令で定めるもの

第四十二条  日本銀行は、前条の規定による業務のほか、我が国の中央銀行としての外国中央銀行等又は国際機関との協力であって国際金融支援その他の国際金融面での協力を図るため、次に掲げる取引その他の当該協力のために必要な取引を、財務大臣からの要請に基づき、又はあらかじめその承認を得て、行うことができる。
一  国際決済銀行が有する外国中央銀行等に対する貸付債権の譲受け
二  外国中央銀行等又は国際機関に対する信用の供与

(他業の禁止)
第四十三条  日本銀行は、この法律の規定により日本銀行の業務とされた業務以外の業務を行ってはならない。ただし、この法律に規定する日本銀行の目的達成上必要がある場合において、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない。
2  第七条第四項の規定は、前項の認可について準用する。

(考査)
第四十四条  日本銀行は、第三十七条から第三十九条までに規定する業務を適切に行い、及びこれらの業務の適切な実施に備えるためのものとして、これらの業務の相手方となる金融機関等(以下この条において「取引先金融機関等」という。)との間で、考査(取引先金融機関等の業務及び財産の状況について、日本銀行が当該取引先金融機関等へ立ち入って行う調査をいう。以下この条において同じ。)に関する契約(考査を行うときはあらかじめ取引先金融機関等に対し連絡しその承諾を得なければならないものであることその他の政令で定める要件を備えたものに限る。)を締結することができる。
2  日本銀行は、考査を行う場合には、当該考査に伴う取引先金融機関等の事務負担に配慮しなければならない。
3  日本銀行は、金融庁長官から要請があったときは、その行った考査の結果を記載した書類その他の考査に関する資料を金融庁長官に対し提出し、又はその職員に閲覧させることができる。

(業務方法書)
第四十五条  日本銀行は、業務方法書を定め、これを財務大臣及び内閣総理大臣に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。
2  前項の業務方法書には、資金の貸付けに関する事項その他の政令で定める事項を記載しなければならない。